長距離列車の電車化は、国鉄の動力近代化における重要課題であり、準急用として1950(昭和25)年には80系湘南形電車が、1957(昭和32)年には車体の軽量化や走行性能を改善した91系東海形電車がそれぞれ誕生しました。
その技術を生かして東京~大阪間を6時間台で結ぶ「ビジネス特急」が企画され、90系や当時最新鋭の高速電車であった小田急3000形SE車などで現車試験を行い、数々の新技術を投入の結果1958(昭和33)年に運転を開始したのが「こだま」用20系電車です。
この20系(後の151→181系)電車は、高速度試験において狭軌鉄道世界最高速度となる163km/hを記録、その後の1964(昭和39)年に運転を開始する新幹線電車の開発への礎となりました。本書では、戦後の電車発達史の頂点ともいえるこの「こだま形」20系電車について、技術的・デザイン的な開発の経緯を解説します。
■掲載内容巻頭グラフ 誕生 こだま形/「こだま」に影響を与えた車両/特急「こだま」がやってきたはじめに1.客車特急から電車特急の実現に向けて2.長距離高速電車の実現へ 2.1 高速度試験で期待通りの成果 2.2 長距離高速電車の開発開始3.「ビジネス特急」の設計開始 3.1 国鉄と各メーカーとの共同設計開始 3.2 ディスク・ブレーキの現車試験を実施 3.3 冷房装置の先行開発は島技師長の発想から 3.4 機能と優美さとスピード感を兼ね備えた前頭部 3.5 静かな車内を求めて「車両防音委員会」の提言受ける 3.6 旅の楽しさを演出する設備と工夫 3.7 空気バネ台車の開発 3.8 公募による愛称名とシンボルマーク 3.9 外部塗色決まる4.いよいよ完成へ。姿を現す「特急こだま」5.モハ20系のプロフィール6.モハ20系「特急こだま」試運転始まる7.モハ20系「特急こだま」営業開始8.そして高速度試験へColumn 伊勢湾台風に遭った特急「こだま」おわりに